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『マリアビートル』【37】

 伊坂幸太郎『マリアビートル』(角川文庫)を読んだ。
 
 物語世界の中では『グラスホッパー』の続編で,やはり殺し屋たちの狂想曲だ。

 6歳の息子をデパートの屋上から突き落とされた元殺し屋「木村」は,犯人で殺人嗜好者の中学生「王子」に復讐するため,東京発盛岡行の東北新幹線<はやて>に乗り込むが,逆に王子に囚われてしまう。王子は,意識が回復することなく病床にある木村の息子のもとに殺し屋を派遣し,人質に取っていた。木村の息子は助かるのか。

 殺し屋の「蜜柑」と「檸檬」は,盛岡にいる裏社会の大物「峰岸」の依頼でその息子を誘拐犯から取り戻し,身代金の入ったトランクとともに新幹線に乗り込んだ。ところが,眼を離した隙に何者かにトランクを奪われ,峰岸の息子まで殺されてしまう。このままでは峰岸に殺される。彼らは犯人たちを見付け,身に迫る危機を乗り越えられるのか。

 不運に取りつかれている「何でも屋」の七尾は,依頼者から,新幹線に乗って蜜柑たちのトランクを奪ったら上野駅で降りるよう指示されていた。彼は,トランクは奪ったものの,不運にも上野駅で降りることができない。このままでは蜜柑と檸檬に見付かってしまう。彼は無事に逃げ切ることができるのか。

 という,同じ新幹線に乗り合わせた殺し屋たちの攻防を,3組それぞれの視点を交互に描いたサスペンスである。が,それらは等価ではなく,際立っているのは王子の悪である。王子は,ただ自らの嗜好のために他者をいたぶり殺害する人物であり,しかも狡猾で隙がない。作者が彼にどういう結末を与えるのか。それが,本作の最大の見所である。

 ずっと伊坂幸太郎のファンで,『SOSの猿』と『あるキング』の辺りで「何か違う」という感想を持った人にとっては,「やっと求めるものを書いてくれた」と思うのではないか。
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もじゃぽっくる

Author:もじゃぽっくる
神戸在住/35歳/男

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