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『おれは権現』【12】

 司馬遼太郎の『おれは権現』を読んだ。

 戦国末期から大阪の陣までの時代を舞台にした時代小説と歴史小説の短編集である。

 福島正則を描いた「愛染明王」は,秀吉や家康を扱った他の作品に脇役としてよく出てくる人物が主人公になっていて,ついつい愛着がわいてしまう。長編と違って主人公の全体像を緻密に描写していく重厚感はないものの,目新しいエピソードを重ねつつ正則の持つ滑稽味と悲哀感を浮き彫りにする筆力は,司馬遼太郎ならではである。

 道頓堀を作った土豪・安井道頓を扱った「けろりの道頓」は,逆に,他の作品で言及されていない人物を取り上げている。筆者自身が冒頭で断っているように,道頓については史料がほとんど残っていないらしい。だから他の作品の脇役として登場させるのが難しかったものであろう。その人物に地を肉を与えたこの小説は,特に読後の余韻の格別なものに仕上がっている。

 他に5編。
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もじゃぽっくる

Author:もじゃぽっくる
神戸在住/35歳/男

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