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『ストーリーセラー2』【11】

 沢木耕太郎ほか『ストーリーセラー2』(新潮文庫)を読んだ。

 沢木の「マリーとメアリー」は,小説でなくエッセイである。ニュージャーナリズムの旗手と呼ばれた筆者の本を,以前は随分読んだ。『人の砂漠』の「おばあさんが死んだ」で,老婆の孤独死事件に出会った筆者は,彼女の人生がどんなものだったのかを知るために取材を重ねていく。真実を追及するというのはこういうことかと強い衝撃を受けた。以来,沢木耕太郎のファンである。

 話がそれた。このアンソロジー所収の「マリーとメアリー」は,カクテルのブラッディーマリーに関する幾つかの挿話と空想を組み合わせた小品である。それこそ瀟洒なバーでカクテルを飲みながら語って聞かせてもらえたらいい気分になれそうな話だった。「面白いお話,売ります」というこのアンソロジーの趣旨には合った随想だと思う。そういえば深夜特急』をまだ読んでいない。アマゾンで注文しよう。

 伊坂幸太郎の「合コンの話」。物語のあらすじが冒頭に書かれてしまっている。結論さえ露わにされている。「人生は変わらない。」と。しかし,本文に入ると,何かが変わるのではないかと思わせる話が次々と展開する。結論が冒頭に示されていることを忘れ,どういう結末になるのだろうと思って読み進めていくと――。

 有川浩「ヒトモドキ」は,両親と姉弟の家族の住む家に,ゴミをそこここから拾い集めてくる薄汚い浮浪者のような伯母が転がり込んできてさんざん迷惑を掛ける話。こんな人間が親族にいたら心底嫌だろうなあ…と思わずにはいられなくなる。そういえば,『ストーリーセラー』第1巻のほうの有川の小説にも,主人公の周辺にそういう迷惑な親族が脇役として登場した。他を読んだことがないので何とも言い難いが,有川作品の特徴の一つなのだろうか。

 他に4作品を所収。

 7人の作家の,それぞれに趣向の違う作品が収められている。(どれとは言わないが)偽善的で読後感の悪いものが含まれていたとしても,それはそれで愛嬌というものかもしれない。まあ,「合コンの話」を読むためだけに買っても損はないのではないか。伊坂ファンにとって,裏切られた感じはしないと思う。
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もじゃぽっくる

Author:もじゃぽっくる
神戸在住/35歳/男

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